2021年2月17日水曜日

所有権の時効取得


時効により取得できる権利には、所有権のほかに地上権、永小作権、地役権、不動産賃借権がありますが、ここでは所有権に絞ってその成立要件、効果、登記手続について復習します。


認定考査では、原告(時効取得者)の被告(原所有者)に対する「所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記請求権」として表れます。


所有権の時効取得の要件

①所有の意思(自主占有)があること

②平穏かつ公然と占有すること(民186条に推定規定がある)

・「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。」(民186Ⅰ)

③物を占有すること

・自己の物であっても取得時効を主張できる。(最判S42.7.21)

・他人に代理占有させても良い。

④占有が継続していること

・占有者が他人によって占有を奪われた時、時効は更新するが(民164条)、占有回収の訴えによって占有を回復すれば、占有は、現実に占有をしていなかった期間も含めて継続したものとみなされる。(最判S44.12.2。民203但書)


所有権を時効取得するために必要な占有期間

・所有権は、占有開始時において善意&無過失であれば10年間の占有で取得時効が完成。(民162Ⅱ)

・それ以外は20年間の占有で取得時効が完成。(同条Ⅰ)


所有権の時効取得の効果

所有権を時効取得することにより、占有開始時に遡って原始取得する。(民144)


登記手続

・登記原因日付は、時効の起算日(原始取得だから占有開始時に遡る)

・AB共有の不動産を時効により取得したCがA持分のみ時効を援用し、A持分全部移転の登記を申請可。時効の援用は相対的だから、持分のみの取得も可。(研究397P83)

・原始取得なのに保存登記ではなく移転登記の形式を採るので、実体と登記の形式が一致していない。

・占有者が時効の援用後に死亡した場合、占有者の相続人は「時効取得」を原因として被相続人名義で移転登記をした上で、「相続」を原因とする相続人への移転登記をする。いきなり「時効取得」を原因として相続人に移転登記は不可。(生前の時効の援用により所有権は被相続人にいったん移っている【中間省略登記になり、不動産物権変動の過程を忠実に反映できない】)

・占有者が時効の援用前に死亡した場合、相続人は被相続人の占有承継者として時効を援用できるので、いきなり「時効取得」を原因として直接相続人に移転登記可。

・被相続人の占有開始後に出生した相続人が、被相続人死亡後に被相続人の占有を承継して登記の申請をした場合、登記原因日付は被相続人の占有開始時であるが、この日は相続人の出生前の日であり、不都合にも見えるが、この相続人からの登記の申請は受理される。(研究603P135)

・時効の起算日前に所有権登記名義人が死亡していた場合、所有権登記名義人からその者の相続人に対し「相続」を原因とする移転登記、そして、その相続人から時効取得者への「時効取得」を原因とする移転登記の順で登記をする。(研究455P89)

・時効取得による所有権の取得は原始取得であるため、占有開始後の制限物権は消滅するが、この場合の制限物権の登記の抹消手続は、登記原因を「所有権の時効取得」(原因日付は占有開始日)とする共同申請による。(研究574P7)

・持分のみの時効が援用された場合における所有権全体にかかる抵当権は、その持分のみにおいて消滅するので、この場合の登記は抹消登記ではなく「○番抵当権更正」による。

・不動産の所有者が不在者で不在者財産管理人が選任されている場合、時効取得による当該不動産の移転登記を申請するには家裁の許可書が要る。(研究548P165。時効の存否の確認は財産管理人の管理行為の範囲を超えているため)

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